アメリカ合衆国の「United States Institute for Theatre Technology / 米国劇場技術協会 / 通称:USITT」が提唱した「EIA-485>」に基づく通信プロトコルです。 主に舞台照明や演出機器の制御に使われており、ANSI(American National Standards Institute / 米国国家規格協会)にも2004年に 登録されたそうです。
本家 http://www.usitt.org/content.asp?contentid=370
規格書 http://www.iar.unicamp.br/lab/luz/ld/C%EAnica/Manuais/dmx_usit.pdf
規格書は英文で内容も難しい。規格の概要を理解するなら何と言ってもタマテックラボさんの勉強部屋が一番わかりやすいでしょう 。
タマテックラボさんの勉強部屋 http://www.tamatech.co.jp/tamada/
ここに規格の詳細を書いてもタマテックラボさんの丸写しになるだけですから、興味ある方はそちらをご覧ください。
Wikipediaにも解説があり、わかりやすくて詳しい資料のようです。
Wikipedia DMX512(英語版) http://en.wikipedia.org/wiki/DMX512 Wikipedia DMX512-A(日本語版) http://ja.wikipedia.org/wiki/DMX512-A
リンク切れがあったらご勘弁を。
規格には大きく分けて世代別に3つあります。
細かな違いはありますが上位互換で、現行規格はDMX512-Aです。
DMX512 standard の器具はお目にかかったことがありません。 現在稼働中の器具のほとんどはDMX512/1990を元にしているようです。 DMX512-Aは、ベンダーコードなどの新たな要素を加えつつ、相性問題を避けるための仕様を盛り込んだ規格のようです。
いわゆる「相性問題」ですが、規格の違いではなく、間違った解釈で作られた製品が出回ったことが原因のようです。DMX512/1990> まではかなり大雑把な規格らしく、間違った解釈をされても致し方ないようです。 最近は相性問題によるトラブルをほとんど聞きませんが、自然淘汰に近い形で規格とおりの製品群になってきたのでしょう。
現場においてはDMX512/1990とDMX512-Aの違いが気になるところですが、主だった部分は同じでなので、実用上はそれほど気にする>必要はないようです。
私が理解している大きな違いは次の通りです。
DMX512/1990 | DMX512-A | |
ベンダーコード | 未対応 | 対応 |
送受信スロット数 | 1~512 | 24~512 |
5Pキャノン以外の使用 | 記載なし | 原則禁止 |
上記は互換性を維持した機能拡充と規格をより明確化したものなので、規格とおりに作られた機器ならDMX512/1990とDMX512-Aが混> 在しても通常操作において問題になることは無いと思います。
DMX512機器の製作においては、DMX512-Aで採用された新機能は使わず、DMX512-AにもDMX512/1990にもある機能をDMA512-Aの仕様に>則って使うのがトラブルを最も少なくできる選択だと思います。
当たり前に使っているDMX512ですが、基本的な制約を知っているようで知らない。 そんなことを書いてみます。
シールド付きツイストペアケーブルを使います。 規格ではRS485/422用ケーブルを使えとなっています。ケーブルメーカー各社が対応ケーブルを出しているのでそれらを使うべきで>しょう。
カナレの4E6S(マイクケーブル)のようなシールド付きツイストペアケーブルも準対応品とされているようです。Fケーブルでもケー> ブルが短ければ普通に動いてしまいますが流石にこれはお勧めはしません。
DMX512のハードウェア実体であるRS-485(EIA-485)のケーブル最大長は1,500mですが、通信速度に反比例して距離が短くなります。2 50kbpsのDMX512におけるケーブル長は400mが上限だそうです。 ただ、これより長くても届くことがありますし、短くても届かないこともあります。最大値の目安とし、安全率を考慮して使うべき でしょう。
信号経路を二股ケーブルで分岐してはいけません。 二股ケーブルを使ってもほとんどの場合動きますが、規格上は信号経路をシングルラインにしなければなりません。分岐する場合は スプリッターを使います。 これはRS-485(EIA-485)の規格によるものですから、詳しくはそちらの技術資料を参照してください。
送信機(正しくは送信回路)に繋げられる受信機(受信回路)の最大数は32個です。受信回路(レシーバ)を最大64個繋げられる送信回路 (トランスミッタ)ICもありますが例外的なことであり、規格上は最大32個です。これ以上になる場合はスプリッターを入れてバッファ ー(信号増幅)をする必要があります。 もちろん、スプリッターもレシーバの一つとして勘定しなければなりません。
ケーブル経路の末端に入れる抵抗で、末端反射による信号のにじみを防止します。 通常、120 の抵抗をDATA-ピンとDATA+ピンの間に入れます。 無くても動くことが多いですが、入れた方がいいと思います。
DMX512は様々な機器を使って便利に配信できます。 代表的な機器の種類を一覧します。
DMX512の物理実体であるRS485は、シングルライン接続が前提であり、二股ケーブルなどで信号経路を分岐してはいけません。 ですが、実際の配線では信号経路を分岐する必要があります。 スプリッターとはDMX512(RS485)の信号経路を分岐するための装置です。一つの受信回路(レシーバ)で信号を受け、これを複数の送>信回路(トランスミッタ)に分配して再送出します。 スプリッターは比較的簡単な装置なので、詳しい解説と回路の実際を製作記事として別ページに挙げてみます。
信号経路を「アイソレーション」する装置です。 アイソレーションとは「電気的に絶縁すること」を意味しますが、アイソレーションしてあれば信号線のショートや機器の漏電など で信号経路が破綻した時にその影響を一部分だけでくい止めることができます。一箇所の故障で全体の機能が失われないための防波堤 と思えばいいでしょう。 トランスを用いる方法と光半導体(フォトカプラ、フォトトランジスタ)を用いる方法がありますが今の主流は光半導体です。 製品は、アイソレーター単体で供給されることより、アイソレーション機能を併せ持ったスプリッターとして供給されることが多い ようです。 これもスプリッターの製作記事に絡めて挙げてみます。
分岐ではなく、ミキサーの名前の通りDMX512信号を混ぜる装置です。複数のDMX512信号を1本のDMX512信号にします。アドレスごと にどの入力信号の値を使うか判断されます。 ほとんどの場合HTPで扱われます。HTPとは同じアドレスにおいて値の大きい方を採用する考え方です。 HTPに対するLTPは、値の大小に関係なく、入力信号の値が直近で更新された方を採用する考え方です。 自作するにはちょっと難しい装置です。
いわゆる「パッチ」をします。 入力信号と出力信号のアドレスをランダムに結び付け、DMX512のデータを交通整理します。 今時はパッチ機能を持った調光卓が一般的ですから需要は少ないかもしれませんが、一つのユニバースで複数のユニバースを制御す るときには必要になることが多いと思います。 これもミキサー同様に自作するのは難しい装置です。
DMX512信号を無線で送受信する装置です。ケーブルの敷設が困難な状況では大変便利です。 ただし、汎用の2.4GHz帯を使う製品がほとんどなので、Wifiやデジタルワイヤレスマイクなどのこの帯域を使う製品が多くなった昨 今は混信によって正しく機能しないことも少なくありません。 言うまでもなく、自作は困難な装置です。
機器メーカーが独自で採用した仕様がスタンダードとして使われていることがあります。 そんな仕様を書いてみます。
ひょっとすると、正規の規格に沿った5Pキャノンコネクタを使った製品よりも稼動数が多いかもしれません。 5Pのピンアサインを3番ピンまで使っているだけです。 1番/GND 2番/DATA- 3番/DATA+ 問題なく動きますし、一般的なマイクケーブルが代用できるメリットもあり、何と言っても3Pコネクタは5Pコネクタより遥かに安価 です。 ですが、規格書にあるとおり、音響回線に挿し間違えた場合にお互いの破損を招く可能性があります。特にマイク用のファンタム電 源が通じているとDMX512機器が破損します。普及はしていますが、避けるべき仕様です。
DMX512信号とDC電源を一本のケーブルで送ります。主にスクローラーなどで使われています。 ピンアサインはほぼ統一されており、 1番/GND 2番/DATA- 3番/DATA+ 4番/DC電源(+24vが一般的) とされることがほとんどです。 音響などで4Pキャノンコネクタを使われることが減ったので、挿し間違えによる破損の心配はほとんどありません。ただ、ケーブル 等の故障で信号経路とDC電源経路がショートして機器の破損に至ることも少なくありません。ケーブルの製作には注意が必要です。コ ネクタのハンダ部には熱収縮チューブや耐熱チューブ、コーキングなどで絶縁カバーを施すべきでしょう。 用いられているDC電源電圧は+24vが主流ですが、まれに+12v、+48vの製品もあるようですから注意が必要です。
RJ45モジュラーコネクタを用いたEthernetケーブル(LANケーブル)をDMX512の配線ケーブルにする方法です。Ethernetケーブルを単>に接続ケーブルとして使うだけですから、ACNやArt-Netのような「DMX over Ethernet」とは全く違います。もちろん経路中にEthernet-HUBが入っていれば通信できません。 EthernetケーブルのRJ45モジュラーコネクタは8極でツイストペアが1-2,3-6,4-5,7-8となっていますので、7-8をGNDとし他のツイ>ストペアでDMX512信号を流すのだそうです。ストレートケーブルを用います。 ケーブルの性能的には十分可能なことですが、事故や混乱の元ですから避けるべきでしょう。目先の便利に眼が眩んでしまった典型 的な愚行ですね。
調光器を制御するなら十分な性能で、ムービングライトや多機能LEDを制御するにおいても大きな不満はなく、何より広く普及して>います。 これがベストだと言い切れる自信はありませんが、現実的なベターでしょう。