演出機器を自動的に動作させるクリックとして使われるタイムコードについて書きたいと思います。
目次
舞台やイベントの現場で用いるタイムコードと呼ばれる物は「SMPTE12M」又は「LTC」と呼ばれる信号です。「SMPTE」とは日本語で「シンプティ」と読みます。
そもそもは動画のフレームナンバーを表す物です。動画は超高速紙芝居ですが、何番目の画像かを時刻表現に近い形式で表します。ですから。演出器具を動かすためのクリックでもなければ、時刻を表すための物でもありません。性質上、その様に使えるだけです。細かい経緯はわかりませんが、複数の機器を時刻の進捗に合わせて自動的に動かすのに便利なので使われているようです。
注意ですが、タイムコードと呼ばれるシステムはこれだけではありません。動画に全く関係無いところで全く違うタイムコードが使われていることもあります。
「動画は超高速紙芝居」と書きましたが、動画は静止画を一定の間隔で差し替えることで動いているように見せる手法です。動画をスロー再生する(静止画を切り替える間隔を長くする)とカクカクと動きが飛び々々に見えると思いますが、静止画を切り替える間隔を一定以上に短くすると滑らかに動いている様に錯覚することが動画の原理です。
撮った動画を単に放映するだけなら不要なことかもしれませんが、動画の構成や編集が複雑になってきますと静止画単位で管理した方がよくなってきて、それぞれにナンバリングをする様になったのだと思います。動画では静止画単位をフレームと呼びますので、そのナンバーですから「フレームナンバー」となるのです。
フレームナンバーがあると便利ですが、最初のフレームから単に連番を付けるだけでは桁数が多くなって管理が簡単とは言えません。動画は時間に対して一定の動作をしますので「何分何秒目」と表した方が直感的にわかりやすいので時刻表現に近い形としたのだと思います。一般的には「何時:何分:何秒:何フレーム」と表します。最後の「何フレーム」は1秒の間のフレームの通し番号です。「0時0分0秒0フレーム」から始まり「23時59分59秒29(24フレーム23フレーム)」までカウントできます。24時間時計ですね。
そもそもが動画を静止画単位で管理するためのナンバリングですから、動画のフォーマットの基本を理解しておくべきです。
SMPTE12Mを理解するためには次の二つが重要です。
1秒間に静止画が何枚あるか、という単位です。これが何種類もあります。何故統一しない!?というご意見はごもっともですが、地域と歴史によるのでそういうものとして理解をするしかありません。単位表記は「fps」です。「フレーム・パー・セコンド( Frames par Second )」の略です。1秒間のフレーム数を表します。つまり、フレームレートとは何fpsであるか、という意味です。
主だったフレームレートは次の通りです。
モノクロNTSCで用いられる。
カラーNTSCで用いられる。
テレビ放送において、それ以前のモノクロテレビでも観られるカラー放送(もちろんモノクロで映ります)が出来ないかというニーズに応えた結果この様な中途半端なフレームレートが出来ました。モノクロ放送の上位互換としてカラー化するにはカラーバースト信号と呼ばれる基準信号をフレーム毎に入れないといけないのですが、PALでは隙間に巧く入れられたものの、NTSCではどうしても無理なためフレームの時間長を1.001倍したのです。
PAL(モノクロ/カラー双方)で用いられる。
フィルム映画で用いられる。
タイムコードはフィルムにも焼き付けられることがあります。
【用語解説】NTSC(エヌティーエスシー)やPAL(パル)とはテレビ送信の規格。NTSCは主にアメリカ合衆国やカナダ、日本などで用いられ、PALは主にヨーロッパや旧ソビエト連邦圏で用いられています。
フレームを落とす(ドロップ)という言葉のままです。1.001倍とはいえ累積誤差を無視出来ないこともあるので、29.97fpsにおいて1時間毎の帳尻を合わせようとする方法です。0分を含む10分目の頭以外、毎分0秒の頭2フレームを落とす方法です。勘違いされやすいのですが、動画の静止画を削除するのではなく、動画はそのままにナンバリングのカウントを飛ばします(落とします)。
例えば、9分59秒29フレームの次は10分0秒0フレームですが、10分59秒29フレームの次は11分0秒2フレームです。
時間の累積誤差は気にせず、規定フレーム数を1秒とする考え方です。NTSCにおいてカラー(29.97fps)でもモノクロ(30fps)でも30フレームを1秒とカウントする考え方です。短時間の動画ではこの方法を使うことも多いようです。
規格上の定義ではありませんが、SMPTE12Mはプロトコル(データの中身)を示し、LTCはSMPTE12Mを音響のLINE信号(0dB程度)として扱う信号様式とされる傾向があるようです。
元々タイムコードはフィルムや磁気テープの音声トラックに書かれることが多く、機器間の接続は音声信号とするのが便利だったからだと思います。
いきなり変な用語が出てきました。SMPTE12Mは1フレームあたり80bitのデジタルデータですが、「差動バイフェーズ」とは電気的に0/1を表現する方法の一つです。
差動バイフェーズとは「一定時間中に信号の反転があれば1、反転が無ければ0」とするデジタル符号です。
・・・なんのことかわかりにくいですよね。例を出すなら、仮に1bit長を1秒とした場合、
といった方法です。見ようによると、高い周波数か低い周波数かで0/1を表現しているとも見られます。30fpsの場合、4,800Hzの1周期なら1、2,400Hzの半周期なら0となります。
これなら音声信号として扱えませんか?
音声信号にすると電気的には正弦波になりますが、シュミットトリガーというゲート回路を用いると方形波に復元出来ます。
この方法はそれほど特殊ではなく、パソコン黎明期、カセットテープにデータを保存していた同年代の方々は聞いたことがある「ピーガー」音のことです。
FM変調する方法も考えられますが、低速で良いなら媒体を選ばない意味で便利な方法だと思います。
・・・以下、まとめ中。